各事業者・団体の取組好事例

医療業

就業者数
500人~999人
主な取組内容
  • 多層的な対応体制と組織的な意思決定
  • カスハラ発生の予防的指導

【現状】看護師の被害と、「病気起因による行為」の線引きの課題

当院では、日常的に患者からの暴言、採血時の引っ掻きなどの暴力、処置中のセクハラ行為が発生しています。被害は看護師が圧倒的に多く、その背景には患者との関わる時間の長さや女性比率の高さがあると推察されます。
医療業の特性として、顧客等の病気に起因する意図的でない行為と、意図的なカスハラの線引きが難しい点があります。
治療継続が必要な患者には、転院先を探した上で出禁等の判断となり、他の業種よりも対応が遅れてしまいます。
また、カスハラ対応に携わった職員や管理職の精神的ストレス、診療に支障が出るといった影響も生じています。

【対応】多層的な組織支援と安全確保を基軸とする取組

1.就業者の安全確保と緊急時の対応体制

就業者の安全を最優先とし、カスハラ事案発生時に備えた緊急時の対応を明確に定めています

  • 就業者が負傷するリスクを避けるため、必ず一人で対応しないことを徹底しています。
  • 患者の暴力行為等が発生した場合に備え、「コードホワイト」というコールが発動すると、手の空いた事務員などが現場に駆け付ける院内緊急コールを導入しています。
  • 就業者が判断しやすいよう、暴力行為があれば即時、暴言が30分以上継続し収まらない場合は警察を呼ぶという明確な基準を設けています。

2.就業者のメンタルヘルスフォローと配置配慮

カスハラ行為者が意図的かどうかにかかわらず、就業者のメンタルヘルスフォローのため、心理士による相談窓口の設置し、専門的な心のケアを提供しています。また、必要に応じて担当者の変更を実施し、被害を受け続けることのないようにしています。

3.多層的な対応体制と組織的な意思決定

組織として適切に判断を下す体制を構築するとともに、対応できない案件は、顧問弁護士に確認できるような仕組みとしています。

4.継続的な教育・研修体制

1年に1回行う全就業者向け研修の他に、現場対応者の相談を受ける所属長による所属研修や新入社員向けの基礎的なカスハラ説明など、就業者がカスハラ防止対策に取り組むための意識づくりをしています。

5.カスハラ発生の予防的指導

事態を悪化させないための初期対応の重要性を就業者に徹底しています。
行為が発生した際は、すぐに上司に報告し、対応を引き継ぐことを促しています。

【課題】カスハラ対策の効果と展望

当院のカスハラ対策は、看護職の高い離職率への対策として「職員の満足度向上を図ること」と、「質の高い医療サービスの提供を目指すこと」を目的として実施しています。
対策が本格化したのは最近ですが、既に若手職員の間ではカスハラに対する意識が変化し、従来我慢していた事案についても早期に報告する傾向が見られ始めています。
最大の課題は、ベテラン層の意識改革です。年配の職員ほど、カスハラやセクハラ行為を「当たり前」「我慢すべき職務」と捉える傾向が強く、報告しない慣習が残っています。
このため、今後は「何かあったら必ず報告する」という新たな常識を定着させるため、研修や周知活動を通じて、従来の慣習を改める意識改革を繰り返し行っていく必要があります。